2010年代に入り、インターネットニュースが大きな注目を浴び始めたころ、インターネットの各ニュースにはコメント欄がありました。ニュースをみた人が個人的に思ったことを自由に書き込むことができる機能で、記事に興味を持った多くの人が書き込みに参加し、これまでになかったニュースの見かたができて人気が高いサービスでした。
しかし、その書き込み内容のすべてが決して質の良いものが多いとは言えず、デマやヘイトスピーチ的な内容も多く見受けられました。
政治ニュースは言うに及ばず、芸能やスポーツ、自然災害や重軽犯罪などのニュースにも、一般人からのコメントが数多く寄せられまていましたが、そのなかには、個人を攻撃するものや単なる誹謗中傷も珍しくなく、その内容が社会問題になるものもあるほど。しかも、そのような質の低い書き込みをする人は全体の2%程度と低いわりに、書き込みの数割を占めるほど多くの書き込みをくり返していることがわかりました。
そもそもインターネットニュースの書き込みコメント欄は『誰もが自由で健全な言論を展開できる空間を創る』といったコンセプトに基づいて創設されたものです。しかし運営元とユーザーそれぞれの思惑が噛み合わず、むしろ別の使い方で利用者が増えることで、そのサイトの信憑性や信頼度が揺らぐ事態となったのです。
しばらくして、コメント欄の罵詈雑言はニュースの対象だけでなく、ニュースの著者にまで及ぶようになりました。その中傷内容はさらに酷くなることもあり、そのほとんどが本人を特定しにくいハンドルネームを使用していることが多いため、運営する際とは次々にコメント欄を閉鎖せざるを得ない状況が生まれてしまうのでした。
ユーザーの善意がなければ成り立たないという前提で始められた企画が、全く逆の結果をもたらす結果に終わり、サイト運営者は大きな失望をしたことでしょう。
しかし、今でもこのコメント機能を継続するサイトが存在します。ここでも同じような現象はいまだに続いています、では、なぜ継続して運営しているのでしょうか?
そこには、やはり大きな需要があることが見逃せないでしょう。
実際に、このニュースサイトのPV数は月間で約100億というビッグサイトです。そこでは、1日に書き込みが15万件近くあり、4万人もの利用者がいます。そこから発生する広告収入は非常に大きく、いかなるリスクを犯しても継続して、この機能をある意味独占できるメリットをとっていると言わざるを得ません。そこに書き込みを行う人の半数以上が30代から50代の現役世代で、仕事の合間や通勤途中に書き込みをすることが日課になっているのでしょう。また、そのコメントに対して、読者ユーザーがGOOD or BADのような意思表示をできるのも大きな特徴で、いろいろなコメントに読者の返信や意思表示が添付されます。
これは、ある意味でニュースのコメントにSNSの機能がついているのと同じで、SNS中毒化した大人が、自分のコメントにより多くの返信やGOOD、BADの評価を自己満足で集めているようなものです。
あまりに質の良くないコメントが多いこともあり、ニュース表示とは別にクリックしないと見れないようにするなどの工夫もされていますが、質の向上には至っていないのが現状。もちろん、ごく一部の投稿ではありますが、このようなコメントによって、サイト全体の評価が下がることも懸念されます。
最近では、SNSによる不幸な事件や事故も社会問題になっており、今後、このような事態がインターネットニュースや、その他の書き込みなどによって波及しないことを願いつつ、本当に開かれた討論が行われるようなサイトの解説を願いたいと思います。