「遠距離旅行」から「マイクロツーリズム」へ!旅行・観光業の新しい世界が見えてきた

Man using binoculars on a snow covered mountain

ロックダウン後の新しいエンターテインメントの先駆けとして、いま日本国内でも「マイクロツーリズム」に注目が集まっています。

マイクロツーリズムとは、自宅から1時間~2時間以内の移動圏内で観光する近距離型の旅行のこと。特に、公共交通機関の利用を避け、マイカーによる移動を中心として、自宅から目的地までの地域の魅力の再発見と、地域経済への貢献を念頭に置いた旅行のことをいいます。

マイクロツーリズムと地域経済の復興

いま、近場で観光や宿泊をするマイクロツーリズムの傾向が顕著になっています。

週末や連休を使って観光や旅行をするにあたり、自分が住む都道府県内で宿泊施設を検索する人が多く見られるようになりました。この動きは、緊急事態宣言と外出自粛の下で、新しい生活様式になりつつあった「巣ごもり生活」からの脱却の兆しになるものです。

これは、都道府県をまたいだコロナ感染を防ぐという発想がきっかけですが、自分の住んでいる地域の新しい魅力を発見する機会にもなり、地域への愛着とともに地元の経済復興への大きな原動力にもなり得る活動です。

インバウンドに頼りすぎた地域経済

2010年以降の訪日観光客の増加にともない、東京や大阪、京都といった場所だけでなく、多くの地に外国人観光客が訪れるようになりました。

しかし、2020年の世界的なコロナウィルスの蔓延により、インバウンド需要は完全に無くなり、その影響をまともに受けることになりました。このインバウンド需要の復活に関しては、2021年に延期された東京オリンピックまでに回復が間に合うかも分からない状況です。

そのような状況下において、これまで外国人にターゲットを絞ってきた観光地や商業施設などは大きな事業方針の転換を迫られる結果となりました。もともとは日本人を相手に商いをしてきた有名な商店街では、ここ数年の間にアジア圏の買い物観光客相手の商売に切り替え、家電製品や化粧品を扱うお店や、飲食店の営業へ特化していました。しかし今回の国内需要の回帰に対応できず、廃業するお店も数多くなっています。

インバウンドとアウトバウンドの違い

コロナウィルスの世界的蔓延により、海外からの訪日旅行客が激減したことに対し、これまで海外に旅行に出かけていた日本人が海外に出かけることもなくなりました。近年では約3000万人の訪日外国人がいましたが、海外へ出かける日本人観光客も約2000万人おり、その観光客が日本国内を旅行すれば、十分に観光地の経済を潤すことができます。

外国人観光客は、日本での移動や宿泊の手配に際しては自国の旅行会社を使いますし、観光地でも多くのお金を使う人はごく一部でしかありません。しかし、日本人が観光をするときには、もちろん日本の旅行会社を使いますし、自宅から現地までの間にもさまざまな機会において経済活動を行います。

これによって、インバウンド需要が無くなっても、日本の観光業を下支えすることは十分に可能なのです。

地域経済の復興に欠かせない第1次産業との連携

日本人の観光における特徴のひとつは、やはり地域の特産品のグルメ志向です。海・山・川といった自然が豊かな日本では、それぞれに特産品を持っています。それらを支えているのが第1次産業で、実は観光業の目玉の多くはこの第1次産業と密接に関連しています。

マイクロツーリズムが浸透しつつある今、そのような地域の第1次産業を復興する大チャンスでもあります。第1次産業は農林水産業が代表的ですが、地域の漁師や農家、林業家は、この機会に観光客に体験型のイベントを開催し、オリジナル商品の開発やクラウドファンディングでの資金調達するチャンスでもあります。

これまではあまり注目されなかった、地域の名産品や特産品を、めったに来ない観光客ではなく、リピーターとなってくれる可能性の高い地元の観光客に知ってもらえるからです。

旅行に携わる観光業界も、これからはそのような特産品に注目し、旅館やホテルと第1次産業が連携した地産地消プランなどを商品化すれば、これでにはない目玉商品ができるでしょう。また、これまでは商品にならなかったB級品などを上手に利用した商品を、観光客と一緒に考え、オンラインでコンテストを開くのも面白い。

こんなプランを考えたり実行できるのは、地元の人がお客であればこそです。これまでの長い間、一辺倒な観光資源を提供してきた旅行業界が、新しい商品を開発し、マイクロツーリズムで新しい需要を掘り起こすチャンスにすべき時が来たのです。

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