インターネット広告費がテレビ広告費を超える日。それがとうとう現実となりました。
2019年のインターネットの広告費は2兆1,048億円で、前年の1兆9,984億円から6年連続で二桁成長を遂げています。逆にテレビメディア広告費は1兆8,612億円で、前年の費用合計を割り、とうとうインターネット広告費がテレビメディアの広告費を上回ったのです。
さらに、マスコミ4媒体といわれるテレビ・ラジオ・新聞・雑誌の全体広告費もインターネットサービスにおけるデジタル広告費への比率を上げており、今後はますますその差が開くものと思われます。
今回は、今後のテレビとマスコミの広告料の見通しと、その広告主の変遷を考察していきたいと思います。
広告媒体と広告主
これまでの広告媒体はテレビが花形でした。しかしここ10年ほどの間で急速にその勢力を伸ばしてきたインターネットが、とうとう2019年にテレビの広告費を逆転したのです。
これまで、広告主はできるだけ多くの人目に触れることができるテレビという媒体を使って、その番組視聴者の年齢や性別などを予測して広告を出していました。
しかし近年では、インターネットのアルゴリズム(検索エンジンを利用して検索したユーザーに対して個々の検索データに基づいた広告を提供するためのコンピュータプログラム)に基づいた広告提供によって、広告主がより効率的に消費者にアプローチできるようになったために、「ハズレ」の多いテレビよりもインターネット広告に資本を投入するようになったのです。
生活インフラとしてのインターネット
かつて、1950年代からの高度成長期には白黒テレビに始まり、カラーテレビ、平成に入ってのハイビジョンテレビは家族の大切な娯楽であり、家庭の中心にありました。
しかし、平成後期から令和時代に入り若者のテレビ離れは加速し、テレビはもはや家庭のインフラではなくなりました。若者や中高年を中心に、今後はインターネットが欠かせないインフラとなっているのです。
これからの広告媒体と費用はどうなる?
これからもインターネット広告費の比率はまだまだ高まっていくでしょう。それに伴って、広告社会に起きる変化も予想されます。
インターネット広告はダイレクトマーケティング
YouTubeの広告を見ても分かるように、これからの広告はテレビなどのように不特定多数の人をターゲットにせず、個人にダイレクトに働きかけるようになります。その内容も、コンピューターのアルゴリズム解析によってより細分化された効率と確率の高い内容になっていくでしょう。インターネット広告は「ダイレクトマーケティング」なので、反応する確率が高いのが特徴です。広告主にとっては、無駄のない広告が打てるのが最大のメリットです。
広告費の変化がコンテンツ内容を左右する
広告費がテレビからインターネットコンテンツに変わることで予測されるのは、提供されるコンテンツの内容が変化することです。その兆しはここ十年以上前から見られています。
広告費はテレビの業界にとってはダイレクトに番組の制作費に反映されるので、広告費が減ったことによって、制作されるコンテンツの「質」が大きく下がっているのです。
最近のテレビ番組の出演者に、お笑い芸人や素人学生などが多く使われるのもそのせいで、番組の看板となる大物タレント意外は、安い出演料のタレントで賄うという風潮が目立ちます。
これはバブル景気の崩壊なども影響しているのでしょうが、年間に数億円を稼ぎだす素人YouTuberの台頭を見れば、それが現実であることに気づかされるでしょう。
このように、これまでの主流とされていたテレビコンテンツに対する広告費の比率はまだまだ下がる傾向にあります。しかしテレビの広告は、インターネットコンテンツの広告とともに、まだしばらくは続いていくと思われます。
それは高齢化社会が進む中で、テレビ世代がまだまだテレビを見ているからです。
しかしその内容はシンプルに簡素化されていき、同じような内容の番組が増えていきます。それが更なるテレビ離れを生み、広告費もインターネットに流れることが容易に想像できます。これから先もインターネット広告費は予算的にも増え続け、そのコンテンツ内容が精査されていき、素人の領域からプロフェッショナルなサービスを提供できるコンテンツが増えていくことでしょう。