コロナ禍のなか、アウトドアブームが再燃し『魚釣り』も賑わっています。
1980年代から1990年代にかけての第1次釣りブームの頃に子どもだった今の40代以上の世代を含め、その子供達の世代も『密』を気にすることなく、のんびりと家族で楽しめる魚釣りに注目しているのです。
そんななかで、ひとつの異変が報告されています。それが今回のテーマである『餌不足』なのです。
釣り餌といってもその種類は非常に多く、人工的に加工した集魚剤や錬りえさもあれば、生の魚やエビなどの餌、生きた魚やエビ類、ウニ、ヤドカリ、フナ虫など一風変わった餌もあります。いま、とくに不足が心配されているエサの一つが『ゴカイ』の類で、一般的に餌釣りで使われる中でも、最もポピュラーなエサのひとつです。
そんなゴカイの一種である『石ゴカイ』が2020年の初夏の頃から急に釣り餌屋さんから姿を消したのです。実際、地域によっては全く手に入らないというほど枯渇時期もありました。そもそも石ゴカイが良く使われる釣りは、初夏に始まる砂浜などでの『キス釣り』に多く、魚の反応がすこぶる良いので、愛好者が全国に多くいます。そんな愛好者の中で、餌の石ゴカイがないと話題になったのです。
石ゴカイがないといったニュースは、キス釣りが終わる秋の頃には落ち着いてきました。それは、石ゴカイという餌が、あまり他の釣りには使われないからで、決して急に供給されるようになったからというわけではありません。実際に、他の餌の中にも供給が止まったままの物もいくつか見られます。
では、なぜこのような事態が起きたのかを調査したところ、じつは釣りブームの原因のひとつにもなった新型コロナウィルス影響が大きいことがわかりました。
詳しく説明すると、釣り餌の一部は、中国をはじめとする外国からの養殖の輸入品が多く、国内産の餌も養殖ものがほとんど。そんな養殖餌の流通がストップして、餌の供給が無くなったことが原因のひとつだったのです。このような事態により、国内外の養殖業者が廃業を余儀なくされ、これから先に流通が元通りになったからといって、これまでのように釣り餌が確保できる状況に戻るかはわかりません。石ゴカイだけでなく、『ボケ』や『ユムシ』といったあまりメジャーではないものの、釣り餌として重宝されていた釣り餌が無くなるといった声も聞かれ始めています。
現状では、足りない釣り餌の代わりとして疑似餌をすすめたり、ほかの釣り方で対応したりしてその場を凌いではいますが、釣りは古い昔から全国で行われており、釣法にいたっても日本各地に伝わる伝統文化のひとつといえます。いくら疑似餌を使ったルアーフィッシングがゲーム要素を取り入れたブームとなっているとはいえ、餌釣りが途絶えることは、釣り業界だけでなく日本の文化としても大きな損失です。
釣り餌はもともと流通量が決して多いものではないので、いちど無くなってしまうと生産や流通の回復が難しいものです。そういった意味でも、今回の釣り餌の枯渇は、魚釣りというひとつのレジャーだけでなく、文化的な損失を招く恐れがあるという警告でもあるのです。
これは釣りだけではないことで、コロナ禍において、いろいろな産業が壊滅的な打撃を受け、産業そのものがなくなりつつある業界も少なくありません農林水産業をはじめ。レジャー、娯楽産業や伝統文化など、思わぬことがきっかけとなって、ひとつの産業が失われてその周辺産業も共倒れになるといったことが目の前に迫っている現実があります。
新型コロナウィルスの蔓延がこれ以上続けば、更なるダメージを受ける業界も芋づる式に増えるかもしれません。このような事態を招かぬように、早いコロナ禍の終焉を期待したいものですね。