これまで、国内外で数々の音楽シーンを支えてきたライブハウスという存在。いま、その未来が大きく揺らいでいます。
暗くて狭い場所に多くの若者が集い、大音響、熱狂的な空気の中で絶叫し、皆が魂を一つにするのがライブハウスの姿であり醍醐味でした。
しかし今後、このような気密性の高い空間を作り出すことに細心の注意を払いながら魅力ある演出ができなければ、ライブハウスという独特な空間を維持していくことができなくなりました。
そもそもライブハウスの運営には多額の費用が掛かるうえ、稼働率や稼働時間も効率の良い事業ではありません。施設や設備の維持にはお金だけでなく多くの人手も掛かります。
いま有名になっているアーティストの多くが、このような地方のライブハウスからスター街道を駆け上がってきた事実を考えると、ライブハウスの衰退は、今後の音楽という文化の衰退をも意味します。
音楽という日常生活に必要不可欠な文化を絶やさないために、いまライブハウスに何ができるか、何をしなければならないかを考えていきます。
第1章 ライブハウスの醍醐味
ライブハウスの醍醐味は、密集した空間で、自分の好きなアーティストと近い距離で、同じ思いをもつ仲間と時を一緒に過ごすことにあります。しかし、映画や演劇、クラシック音楽のコンサートとは違い、入場者数や席数を減らして「密」を避けることが非常に難しい空間。今後のライブハウス運営には、このような難題を解消しつつ、アーティストとオーディエンスが一定の距離を保ったままで心を一つにできるイベントを提供できるプロデューサーの役目が求められます。
第2章 新しい収入源のプラットフォームを創造する
いままで、ライブハウスの収入源は主にアーティスト側からの施設の使用料とオーディエンスへの飲食提供などの売り上げに頼って来ました。
しかし、今後のライブハウスの営業活動は、ライブを行う場所を提供するということだけにとどまらず、ライブ配信をしたり飲食物や販売物を合理的に効率よく販売するといった新しいサービスを提供することが重要になります。元々が大きな市場ではないために、今までにない発想で新たな需要を掘り起こしていくという想像力が必要不可欠です。
ライブコンサートのオンライン配信のプロデュースをはじめ、VRを使った臨場感と想像力の溢れる付加価値の提供。それに即したグッズやコンテンツのオンライン販売や店頭販売。今まではライブハウスに興味の無かったジャンルや顧客の獲得も必要でしょう。
これからのライブハウス運営は、充実したエンターテイメントを提供しながら、ライブハウスに縁の遠かった人にも魅力的なコンテンツを発信し、見込み顧客を増やし、実際の顧客にしていくというコンテンツマーケティングを取り入れていかなければなりません。そして、オフラインからオンラインへの移行がスムーズに行われた事業者に勝ち残るチャンスが与えられます。
第3章 ライブハウスの未来像
ライブハウスに集う人たちのイメージは、ロックやニューミュージックが好きな「若者」。少子高齢化が進むいま、ライブハウスが提供すべきサービスの顧客ターゲットの年齢層も若者中心から中高年層にも配慮すべきところです。音楽を文化として残そうという気概がある経営者であれば、地元周辺の商店街や自治会なども巻き込んだイベントを開催し、空いている時間をレンタルスペースやフリースペースとして地元住民などに提供して、明るいライブハウスのイメージ戦略を構築することが重要です。
ライブハウスは暗いホールで若者が密集して騒ぐというイメージを払拭し、いろいろなジャンルの音楽を、地域の人もその他の人もライブ、オンラインでも楽しめるようにする。そして、収入源を多角化する試みが待ったなしで必要ではないでしょうか。